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限定承認の落とし穴〜相続税

カテゴリ: 限定承認

みなさんこんにちは!

名古屋もまだまだ暑さが続きますので、みなさんも熱中症には十分、お気を付けください。

 

さて、本日は、前回と関連して、「限定承認の落とし穴〜相続税」についてお話していこうと思います。

 

まず、限定承認を行った場合でも、相続税がかかる場合があります。

 

そもそも相続税については、相続または遺贈によって取得した遺産の額が一定の基準額(基礎控除額)を超えた場合に、発生します。

 

この基礎控除額については、3000万円+法定相続人の人数×600万円で計算されます。

たとえば、相続人が3人いる場合は、3000万円+3×600万円で、基礎控除額は4800万円となり、課税対象の遺産額がこれを超えなければ、相続税は発生しません。

 

限定承認に話を戻しますと、限定承認であっても、プラスの遺産額(土地や建物、預金など)がマイナスの遺産額(借金や負債、準確定申告により発生した所得税等)を超え、かつ、基礎控除額も超える場合、相続税が発生します。

もっとも、限定承認を適用する場合、通常、負債が存在することが多く、基礎控除額を超えることはあまりないため、相続税がかかる場合は、それほど多くは在りません。

また、基礎控除額を超えた場合でも、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減控除等の各種の特例や控除を利用した結果、相続税の納税が不要になる場合もあります。

 

なお、限定承認によるみなし譲渡所得税については、相続債務として遺産から支出することになりますが、相続税の場合は、相続債務には当たりませんので、注意が必要です。

また、相続税の申告・納税は、相続を知ったときから10ヶ月以内ですので、迅速に手続きを行う必要があります。

 

このように、限定承認を行った場合、みなし譲渡所得税がかかる場合やそれに加えて相続税もかかる場合があるため、限定承認を行うかどうかの判断については慎重になった方が良いでしょう。

 

さて、次回は、今回に引き続き限定承認に関するものとして、「限定承認の落とし穴~任意売却」についてお話していこうと思います。

 

それではまた!
 

限定承認の落とし穴~先買権と不動産取得税

カテゴリ: 限定承認

みなさんこんにちは!
名古屋も連日、猛暑が続きますが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。


自宅にいても、熱中症になる場合もあり、また、体内の水分がわずかに不足するだけでも、集中力が低下するといわれていますので、みなさんもお気をつけください。


私自身は、毎日2リットルは水分を積極的に摂取するようにしています。

 

さて、本日は、「限定承認の落とし穴~先買権と不動産取得税」についてお話ししようと思います。

 

まず、先買権を行使した結果、自分の法定相続分だけでなく他の相続人の持分も取得した場合、通常の相続とは異なり、不動産取得税が課税される可能性があります

 

そもそも不動産取得税とは、不動産を取得した場合に課税される地方税のことで、原則、固定資産税評価額の4%とされています。


通常の相続の場合、たとえば、父が死亡し、子が不動産を引き継いだ場合などは、不動産取得税はかかりません。

しかし、先買権に基づき、不動産を取得した場合、相続ではありますが、例外的に、他の相続人の持分部分について、不動産取得税がかかります。

 

たとえば、相続人が2人おり、限定承認を行い、一人が先買権を行使し、不動産を取得した場合、名義変更をするためには、各2分の1の相続登記をし、そこから、先買権を行使した人の単独名義にする必要があります。


そのため、このケースの場合、先買権を行使していない相続人が有していた2分1の持分について、不動産取得税が課税されます。

仮に、遺産が2000万円の工場建物の場合、その半分の1000万円について、4%の不動産取得税がかかるため、40万円の不動産取得税を支払う必要があります。

なお、当該40万円については、限定承認の清算中は、基本的に遺産から支出することはできず、相続人自身が負担すべきものとなります。

 

このように、限定承認は、通常の相続とは異なる部分が多くありますので、実際に手続きを行われる場合は、限定承認に詳しい、弁護士、税理士にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、「限定承認の落とし穴〜相続税」について、お話ししていこうと思います。

 

それではまた!
 

限定承認の落とし穴~弁済後に残余財産がある場合

カテゴリ: 限定承認

みなさんこんにちは!

 

名古屋もだいぶ暑くなり、日中36度を超す日もだんだん多くなってきました。

 

みなさんもくれぐれも熱中症にはお気を付けください。

さて、本日は、前回に引き続き、「限定承認の落とし穴~弁済後に残余財産がある場合」についてお話していこうと思います。

 

まず、限定承認の制度は、法律的に重要な部分が未完成であり、特に今回お話しする残余財産があった場合の処理について、解釈が分かれており、特に注意が必要です。

 

そもそも限定承認を行った場合、遺産を換価し、債権者や受遺者に対し、財産を分配した後、残った財産については、相続人が取得するということになっています。

 

ここで問題点として、将来、新たな債権者が現れた場合、相続人は、その債権者に対しては、いくらを支払う必要があるのかが、法律上明確に規定されていないということです。

 

たとえば、遺産が2000万円あり、限定承認した結果、債権者や受遺者に1000万円を支払い、残り1000万円について、相続人全員で分けることになったとします。

 

それから5年後、被相続人に2000万円を貸していたとする債権者が現れました。

しかし、各相続人は、相続した1000万円を使いきっており、現時点では、相続した財産は残っていません。

この場合、各相続人はいくらを支払えば良いでしょうか。

 

この部分について、法律上明確な規定があるわけでもなく、また、判例もないため、解釈によって、結論が分かれることになります。

 

まず、相続人は、限定承認をしているため、相続人は遺産額である2000万円の範囲で借金を負うことになるため、新たに出てきた債権者に対しては、遺産額2000万円から先に債権者等に支払った1000万円を控除した残りの1000万円の範囲で支払えばよいということになりそうです。

 

もっとも、その解釈だと、相続人は、残余財産がある場合、いつまでも残余財産を残しておく必要があり、相続人は、いつまでも残余財産に手を付けられないということになってしまいます。

 

そうなると、限定承認手続きもいつまでたっても終わらない可能性があるため、ある有力な考え方としては、残余財産が相続人固有の財産と混同した場合(たとえば、遺産分割の結果、相続人の預貯金に残余財産が混じった場合)は、新たな債権者は、混じった財産については、請求できなくなるというものがあります。

この場合、新たな債権者が現れた時点では、残余財産はすでに使い切っており、新たな債権者は相続人に対し、何も請求できなくなってしまいます。

 

しかし、この考え方も、法律上決まったものではなく、今後の法解釈によっては、違う考え方もされる可能性があるため、安心することはできません。

 

そのため、私個人としては、残余財産がある場合は、相続開始日から10年が経過するまでは、残余財産の金額等を明確にし、別で保管するなど、万が一債権者が出た場合に対処するようにしておいた方が良いと考えます。

 

このように、限定承認は、法の不備としか思えないような部分があり、解釈も分かれているため、限定承認を行う場合は、専門家に相談のもと慎重に行った方が良いでしょう。

 

さて、次回は、今回に引き続き、「限定承認の落とし穴~先買権と不動産取得税」についてお話ししようと思います。

 

それではまた!
 

限定承認の落とし穴~競売

カテゴリ: 限定承認

みなさんこんにちは!

 

名古屋もだんだん気温が高くなっていますので、熱中症にはお気をつけください。

 

さて、本日は、前回に引き続き限定承認に関して、「限定承認の落とし穴~競売」についてお話ししようと思います。

 

まず、限定承認をした場合で、相続債務を支払うために遺産の換価が必要な場合は、原則として競売をする必要があります。

 

競売の場合、一般的には時価よりも安い価格で買いたたかれる可能性がありますが、万が一、債権者の同意なく、通常の売却方法(任意売却といいます。)で売却してしまうと、債権者から限定承認をした相続人に対し、損害賠償請求をされる可能性があるため、注意が必要です。

 

また、遺産を換価する必要がある場合、遺産に田畑や山林など、競売をしても買主が現れない遺産があったとしても、原則として競売を行う必要があります。

 

競売を行うためには、事前に裁判所に対し、予納金を納める必要があります。


競売の結果、買主が見つかった場合は、売却代金の中から予納金が返金されますが、競売の結果、買主が見つからなかった場合や、安い金額でしか買主が見つからなかった場合は、予納金が戻ってこない場合があります。


予納金の金額は、裁判所ごとによっても、遺産の内容ごとによっても異なりますが、通常は、不動産の利用区分1つにつき50万~100万円前後することが多いです。
そのため、田畑や山林など、買主が現れにくい不動産が多数ある場合は、競売手続きをしてしまうと、数百万円の予納金だけ支払い、不動産は処分できず、予納金も戻って来ないという事態になりかねません。

 

このような事態にならないためには、事前に債権者に山林や田畑に関しては、任意売却を行う旨の同意を得ておくか、もしくは、先買権を利用して不動産を相続人が買い取っておくなどの工夫が必要になる場合もあります。


この部分は、専門家でも知らない方が多いため、限定承認を専門家に依頼する場合は、限定承認に詳しい専門家に依頼した方が良いでしょう。

 

さて、次回は、引き続き限定承認に関して、「限定承認の落とし穴~弁済後に残余財産がある場合」についてお話ししようと思います。

それではまた!

限定承認の落とし穴~先買権

カテゴリ: 限定承認

みなさんこんにちは!

 

今回は、前回に引き続き限定承認の注意点として、「限定承認の落とし穴~先買権」についてお話していこうと思います。

 

まず先買権とは何かについてですが、そもそも限定承認では債務の弁済のために遺産を換価する必要がある場合、原則、競売を行う必要があります。

 

もっとも、競売となると相続人としては、取得したい遺産があったとしても取得できない可能性が高くなるため、法律は、相続人の利益にも配慮して、相続人に対し、遺産を優先的に取得する権利である先買権を認めました。
つまり、先買権とは、競売手続きを停止させ、相続人に遺産の優先取得権を認めた制度のことをいいます。

 

この先買権の注意点として、抵当権などの担保権が実行されたことによる競売については、当該担保権者の同意がない限り、先買権を行使しても、担保権の実行を止めることはできません。

 

たとえば、自宅に抵当権が設定されている場合、相続人が自宅を取得しようと考えたとしても、抵当権者が抵当権を実行した場合、相続人は先買権を行使しても、抵当権の実行を止めることはできません。


この場合、相続人としては、抵当権者と交渉して、任意に抵当権の実行を止めるしかありません。

 

そのため、先買権は、取得希望の遺産に担保権が付いている場合、先買権を行使したとしても空振りになる可能性もあり、また、先買権を行使するためには、事前に家庭裁判所に選ばれた鑑定士に鑑定を行ってもらう必要があるため、鑑定費だけ余分に掛かる可能性もあります。

 

また、先買権を行使した結果、遺産を取得したとしても、相続人が一人の場合や法定相続人全員が法定相続分の割合で先買権を行使した場合以外は、法定相続分割合による相続登記を行う必要があります。


この法定相続分割合による相続登記をせず、いきなり先買権を取得した相続人一人の単独名義にしてしまうと、遺産を処分したこととなり、限定承認が無効になる可能性があります。

 

このように、先買権については、遺産に担保権が付いている場合や、登記手続きの際に落とし穴があるため、先買権の行使を検討されている方は、一度、弁護士などの専門家にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、今回に引き続き限定承認についての話題として、「限定承認の落とし穴~競売」についてお話していこうと思います。


それではまた!
 

限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き②

カテゴリ: 限定承認

みなさんこんにちは!

本日は、前回に関連して、「限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き②」についてお話していこうと思います。

 

前回の復習として、限定承認は、相続人全員で行う必要があり、一人でも限定承認に反対している相続人がいる場合、限定承認をすることはできません。

 

そのため、限定承認を行う場合は、事前に相続人間で協議し、3か月の期限内に、家庭裁判所に限定承認の申述を行う必要があります。

 

なお、限定承認の申述する先は、亡くなった方(被相続人)の最後の住所地となり、被相続人の最後の住所地が名古屋市なら、名古屋家庭裁判所に申述する必要があります。

 

このように、限定承認については、相続人全員で行う必要があります。
もっとも、例外的に、すでに相続放棄をしている相続人がいる場合は、相続放棄をした相続人以外の相続人全員で、限定承認を行うこともできます。

 

たとえば、相続人が被相続人の子3人の場合、子の一人が相続放棄をした場合は、残りの子2人だけで限定承認の手続きを行うことができます。

 

この場合、家庭裁判所には、限定承認に必要な書類に加えて、相続人の一人が相続放棄をしたことを示す書類として、相続放棄の申述受理通知書や相続放棄申述受理証明書の提出を求められる場合もあります。

 

また、さきほどの事例で、子が3人とも相続放棄をし、次の相続人が被相続人の兄弟姉妹となる場合、限定承認するためには、兄弟姉妹全員で限定承認の申述を行う必要があります。
 
この場合も、家庭裁判所には、子3人が相続放棄をした事を示す書類として、相続放棄の申述受理通知書や相続放棄申述受理証明書の提出を求められる場合もあります。

 

このように、限定承認を行う場合は、基本的に相続人全員の協力が不可欠であり、例外的に、相続放棄をした相続人がいる場合は、その相続人を除いて限定承認をすることができます。

 

限定承認については、3か月以内に、手続きを行う必要があり、3か月の期限を過ぎてしまうと、限定承認ができなくなる可能性もあるため、期限に間に合わなさそうな場合は、期限の伸長手続きを行うこともできます。
また、限定承認については、限定承認後の手続きも複雑となるため、限定承認をお考えの方は、一度、専門家にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、今回に引き続き、「限定承認の落とし穴~先買権」についてお話していこうと思います。

 

それではまた!

限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き①

カテゴリ: 限定承認

みなさんこんにちは!

 

名古屋もだいぶ春らしい気温になってきました。
季節の変わり目ですので、みなさんもお体にはお気を付けください。

 

さて、本日は、前回に関連して、「限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き➀」についてお話いたします。

まず、限定承認は、相続人全員で行う必要があり、相続人のうち、一人でも反対している場合は、限定承認をすることは出来ません。

 

そのため、限定承認を行う場合は、相続人全員の了解を得る必要があります。

 

もっとも、例外的に、相続放棄をした相続人がいる場合や、生死が不明な相続人がいる場合は、相続人全員で限定承認を行う必要はありません。

 

相続放棄をした相続人がいる場合は、その相続人以外の相続人全員で限定承認を行うことになり、生死が不明な相続人がいる場合は、その相続人のために不在者財産管理人を選任し、その管理人が家庭裁判所の許可を得て、他の相続人と共同で限定承認をすることができます。

 

なお、限定承認も3か月の期限があるため、3か月以内に限定承認の申述を家庭裁判所にする必要があります。


この3か月の期限は、相続人ごとに判断し、限定承認の場合は、一部の相続人が3か月の期限を経過していたとしても、他の相続人が3か月の期限内であれば、限定承認を行うことができると考えられています。

 

もっとも、一部の相続人の中に、遺産を処分した者がいる場合は、もはや限定承認はできないと考えられているため、注意が必要です。

 

このように、限定承認については、相続人全員で行う必要があり、また、3か月の期限や、遺産を処分してはならないなどのルールがあります。


また、これらのルールを破ってしまった場合、限定承認が認められなくなる場合があります。

 

そのため、限定承認を行う場合は、事前に限定承認のルールや注意点等を調べたうえで、専門家の指導のもと行うか、もしくは、専門家に依頼してしまった方が安心です。

 

さて、次回は、今回の続きとして、「限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き②」についてお話していこうと思います。

 

それではまた!
 

限定承認の落とし穴~譲渡所得税について

カテゴリ: 限定承認

みなさんこんにちは!

名古屋も含め、まだまだ寒い季節が続きますので、みなさんもお体にはお気を付けください。

 

さて、本日は、「限定承認の落とし穴~譲渡所得税について」についてお話していこうと思います。

 

そもそも限定承認とは、簡単にいうと、被相続人の相続について、遺産の限度で負債を取得するという制度です。

 

たとえば、遺産が1億円、負債が2億円ある場合、限定承認を行えば、遺産1億円の範囲で負債を引き継ぐため、結果的に相続する負債は1億円となります。

 

限定承認が行われるケースとして、遺産の額や負債の額が分からないケースや、借金もあるが自宅などを手放したくないケースなどです。

 

もっとも、限定承認は極めてマイナーな手続きであるため、令和2年時点において、相続放棄の件数が23万4732件であるのに対し、限定承認は675件のみとなっています。

 

その要因となっているのは、限定承認の法整備があまり進んでおらず、また、手続きも極めて煩雑であり、また、対応できる専門家がほとんどいないことがその要因と考えられます。

 

また、限定承認には、いくつかの落とし穴もあり、それも限定承認の数が増えていない要因だと考えられます。

 

以下では、限定承認の落とし穴について、まず、譲渡所得税についてお話していきます。

 

通常の相続の場合、被相続人が所有していた不動産を相続したとしても、当該不動産を売却しない限り、相続税がかかることはあっても、譲渡所得税はかかりません。
なぜなら、譲渡所得税は、不動産を売却して得た利益にかかる税金だからです。


しかし、限定承認の場合は、相続であるにも関わらず、不動産を売却しなくとも、譲渡所得税がかかります。


譲渡所得税は、不動産の金額や所有期間によって異なりますが、売却益の約20%に税金がかかる場合があります。


たとえば、不動産の価額が3000万円の場合、限定承認をしてしまうと、不動産の価額の20%の600万円が譲渡所得税として税金を納めなければならなくなる場合があります。
 
仮に、3000万円の不動産と負債が2400万円のみの場合、限定承認を行うと、2400万円の負債に加えて、600万円の譲渡所得税も支払わなければならなくなる場合があります。

 

なお、仮に、負債の額と譲渡所得税の額を合計した金額が遺産の額を超えた場合は、遺産の額に相当する負債(譲渡所得税分を含む。)を支払うことで足り、遺産を超えた額を支払う必要はありません。

 

このように、限定承認については、万が一手続きを行う場合は、譲渡所得税に気を付ける必要があり、手続きを行う際は、限定承認を行った経験のある弁護士や税理士にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は今回の続きとして、「限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き」についてお話していこうと思います。

 

それではまた!
 

相続放棄のデメリット

カテゴリ: 相続放棄

みなさんこんにちは!


最近、名古屋でも、コロナウイルスだけでなく、インフルエンザが流行りだしてきました。


インフルエンザも重症化のおそれがありますので、みなさんもお気を付けください。


さて、本日は、「相続放棄のデメリット」について、お話していこうと思います。

 

相続放棄を行うデメリットとしては、①相続放棄をすると他の親族に迷惑がかかる場合がある、②相続放棄をするとプラスの財産も一切受け取れなくなる、③相続放棄手続きが煩雑である、④生命保険金や死亡退職金を受け取ったときの相続税が高くなる場合があることがあげられます。

 

1 ①相続放棄をすると他の親族に迷惑がかかる場合がある


相続放棄をすると、他の相続から恨まれる場合やトラブルになる場合があります。


そもそも、相続放棄をすると、相続の割合が変更になり、また、相続人が変わります。


具体的には、子や孫等が全員相続放棄をすると、次の相続人は両親や祖父母等となり、両親や祖父母等が全員相続放棄をすると、被相続人の兄弟姉妹、甥姪が相続人となります。

 

よくトラブルになるケースとして、被相続人に多額の借金があり、妻や子らはそれを知っていたため、全員がすぐに相続放棄をしたが、被相続人の兄弟姉妹などは、被相続人に借金があることを知らなかったため、急に債権者から兄弟姉妹宛に、借金の督促状が届いた場合などがあります。
 
そのため、相続放棄をする場合は、次の相続人に迷惑をかけないか、相続人は誰になるのかを理解したうえで、相続放棄を行う必要があります。

 

2 ②相続放棄をするとプラスの財産も一切受け取れなくなる


基本的に相続放棄は、一度手続きをしてしまうと、後戻りすることはできず、後日、相続しようと思っても、相続放棄の取消や撤回はできません。


たとえば、被相続人に借金が多いと思い、相続放棄をしたが、実は、財産の方が多かった場合、相続放棄をしてしまった以上、当然、プラスの財産も相続できなくなります。


 そのため、相続放棄をするかどうかは、慎重になった方が良く、相続放棄をする前に、しっかりと遺産調査を行った方が良いでしょう。

 

3 ③相続放棄手続きが煩雑である


相続放棄を行う場合、家庭裁判所に戸籍謄本や住民票、印紙、郵券、相続放棄申述書等を3か月以内に提出する必要があります。


被相続人の住所地や本籍地が遠方の場合、戸籍謄本を取得するにも時間がかかり、また、相続放棄申述書も記載が間違っていると、相続放棄ができなくなる可能性があるため、いろいろな文献等を調査する必要があります。


このように、相続放棄を行う場合、資料や情報の収集に手間と時間がかかり、手続きが煩雑になる場合があります。


4 ④生命保険金や死亡退職金を受け取ったときの相続税が高くなる場合がある


相続放棄を行った人が、生命保険金や死亡退職金を受け取った場合、相続放棄をしなかった場合に比べ、相続税が高くなる場合があります。

 

そもそも、生命保険金や死亡退職金には、非課税枠というものがあり、相続人の数×500万円までは、税金がかかりません。
しかし、相続放棄をした人には、この非課税枠が適用されないため、高い相続税を納めなくてはならなくなる場合があります。


このように、相続放棄を行う場合、さまざまなデメリットがありますので、相続放棄をご検討の際は、一人で悩まず、必ず専門家にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、「限定承認の落とし穴~譲渡所得税について」について、お話ししようと思います。


それではまた!

 

相続の承認または放棄の期間伸長

カテゴリ: 相続放棄

みなさんこんにちは!


最近、名古屋も含め、めっきり寒くなってきました。
かぜをひきやすい季節になりましたので、みなさんもお気を付けください。

 

さて、本日は、「相続の承認または放棄の期間伸長」について、お話していこうと思います。

 

まず、相続には、3か月の期限があり、3か月間、何も手続きをしなければ相続をしたものとして扱われます。

 
一度、相続したものと扱われてしまうと、基本的に、相続を撤回することはできません。
そのため、相続放棄や限定承認を検討していて、3か月の期限を過ぎてしまった場合、相続したものと扱われるため、相続放棄や限定承認ができなくなります。

 

この3か月の期限について、法的には熟慮期間といいますが、この熟慮期間については、相続の承認または放棄の期間伸長申立という裁判所を通した手続きを行えば、延長することが可能です。

 

この期間伸長申立については、相続人ごとに行う必要があり、A、B、Cの相続人がいた場合、Aのみが期間伸長申立を行い、B、Cが期限内に期間伸長申立を行わなかった場合、B、Cは相続したものと扱われてしまいます。

 

また、期間伸長申立についても、3か月の期限内に行う必要があり、期限を過ぎてしまうと、相続したものとして扱われてしまいます。

 

実際の手続きについて、まず、期間伸長申立ができるのは、相続人や債権者等の利害関係人、検察官です。

 

相続人については、相続放棄や限定承認を検討している相続人はもちろん、他の相続人であっても、申立を行うことができます。
また、次順位の相続人であっても、申立が行うことができる場合があります。
なお、検察官が期間伸長申立を行うことは、ほとんど皆無です。

 

次に、期間伸長申立手続きに必要となる書類としては、以下のようなものがあげられます。
なお、期間伸長対象の相続人と被相続人との関係で、必要となる戸籍謄本の種類が異なりますので、詳しくは、専門家にご相談ください。


①被相続人の住民票除票又は戸籍附票
②利害関係を証する資料(相続人の場合は戸籍謄本など)
③伸長を求める相続人の戸籍謄本
④被相続人の死亡から死亡までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
⑤代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

 

万が一、不足書類があり、追加で集めることができなかった場合、期間伸長申立が認められず、相続をしたものと扱われる可能性がありますので、ご注意ください。

 

また、期間伸長申立については、複数回行うことも可能ですが、実務的には、1度目の期間伸長は問題なく認められることが多いですが、2回目以降になると、期間伸長を行う合理的な理由が必要となり、認められにくくなりますので、ご注意ください。

 

このように、期間伸長申立については、期限内に必要な書類を集めて行う必要があり、専門知識はもちろん、時間と労力が必要となります。
そのため、期間伸長申立をお考えの方は、一度、相続に詳しい専門家にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、「相続放棄のデメリット」について、ご説明しようと思います。

 

それではまた!
 

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