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相続税~非上場株式の評価⑧類似業種比準方式
みなさんこんにちは!
名古屋もだいぶ涼しくなってきました。
季節の変わり目ですので、お体にはお気を付けください。
さて、今回は、前回に引き続き、「相続税~非上場株式の評価⑧類似業種比準方式」として、類似業種比準方式を使った非上場株式の評価について、具体例をもとに説明していきたいと思います。
【設例】
≪評価会社のデータ≫
業種:紳士服卸売業
企業規模区分:中会社の中(斟酌率0.6)
直前期末の資本金額:4000万円
直前期末の発行済み株式数:8万株
①1株当たりの資本金額:500円(株式額面金額500万円)
1株当たりの資本金額を50円とした場合の発行済み株式数(資本金額÷50円):80万株
②年間配当金額(総額):直前期400万円、前々期500万円、前々期の前記600万円
<1株当たり配当金額:450万円(直前2期平均)÷80万株=5.6円>
③利益金額(法人税課税所得金額):直前期8000万円、前々期7000万円
非経常的な利益損金額:なし、受取配当等の益金不算入額:なし
<1株当たり利益金額:{(8000万円+7000万円)÷2}÷80万株=93.75
円>
④純資産価額:8000万円(資本金4000万円、利益積立金2億円)
<1株当たり純資産価額:2億4000万円÷80万株=300円>
⑤類似業種のデータ
業種目:繊維・衣服等卸売業
株価:479円(課税時期の属する月の数値を採用)
1株当たり配当金額:5.2円
1株当たり利益金額:51円
1株当たり純資産価額:376円
具体的な計算式としては、以下のとおりです。
類似業種の株価(479円)×(((5.6円(評価会社の1株当たりの配当金額)÷5.2円(類似業種の1株当たりの配当金額))+(93.75(評価会社の1株当たりの利益金額)÷51円(類似業種の1株当たりの利益金額))+(300円(評価会社の1株当たりの純資産価額)÷376円(類似業種の1株当たりの純資産価額)))÷3×0.6(斟酌率)500円(1株当たりの資本金等の額)÷50円=3557円(類似業種比準価額)(端数切捨て)
このように、類似業種比準方式による評価を行います。
もっとも、実際の申告を行う場合は、各書類を読み解く必要があるため、評価にご不安な場合は、専門家にご相談ください。
さて、次回は、純資産価額方式による非上場の評価について、「相続税~非上場株式の評価⑨純資産価額方式」として、お話していこうと思います。
それではまた!
相続税~非上場株式の評価⑦類似業種比準方式
みなさんこんにちは!
蒸し暑い日が続きますが、名古屋でもコロナが流行ってきましたので、みなさんも、お体には、どうぞお気を付けくださいませ。
さて、本日は、前回に引き続きまして、「相続税~非上場株式の評価⑦類似業種比準方式」と題して、類似業種比準方式による株価算定について、お話していこうと思います。
前回の記事で、類似業種の調べ方をご説明しましたので、次に、類似業種の株価と比準要素の数値を調べます。
まずは、類似業種の株価については、国税庁が発表しているデータを確認することになります。
なお、令和6年度分の類似業種の株価は、以下の国税庁のホームページ(類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別価格等)をご参照ください。
国税庁:令和6年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について(法令解釈通達)
また、株価については、基本的に以下の3つの株価のうち、最も低い金額を選択することになります。
①課税時期の属する月以前2年間の平均株価
②類似業種の前年平均株価
③課税時期の属する月以前3ヶ月間の類似業種の株価のうち最も低い株価
たとえば、課税時期が5月、類似業種が番号81の「織物・衣服・身の回り品小売業」の場合、
①は712円
②は738円
③は722円(3月763円、4月437円、5月722円のうち、最低価格)
となり、これらの最低価格である①712円の金額を株価として、採用することになります。
次に、評価する評価会社の比準3要素である「配当金額」「利益金額」「簿価純資産価額」のそれぞれの数値を確認します。
なお、類似業種における比準3要素である「配当金額」「利益金額」「簿価純資産価額」については、さきほどの類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別価格等に記載されています。
⑴ まずは、評価会社の発行済みの株式を求めます。
これは、実際の発行済み株式数ではなく、一律、以下の計算式で求めた金額を使います。
評価会社の発行済み株式数=直前期末における資本金額÷50円
たとえば、直前期末における資本金の金額が5000万円の場合、発行済み株式数は、100万株となります。
⑵ 次に、評価会社の1株あたりの配当金額を求めます。
計算式は、
直前期末以前2年間の配当金額の合計額×2分の1÷直前期末における発行済み株式数(さきほどの⑴で求めた株式数)となります。
なお、無配当の場合は、0円となり、特別配当などの特殊な配当がある場合は、その部分は除外されます。
⑶ 評価会社の1株あたりの利益金額を求めます。
計算式は、
直前期末以前1年間の利益金額÷直前期末における発行済み株式数(さきほどの⑴で求めた株式数)となります。
なお、直前期末以前1年間の利益金額については、法人税法上の課税所得金額を基本とし、非経常的な利益(固定資産たる不動産の売却など)や配当に係る所得税を控除し、益金に算入されなかった剰余金の配当(受取配当益金不算入金額)や損金の額に算入した繰越欠損金控除額を加算して求めます。
⑷ 評価会社の1株当たり純資産価額を求めます。
計算式は、
直前期末における資本金等の額及び利益積立金額の合計額÷直前期末における発行済み株式数(さきほどの⑴で求めた株式数)となります。
⑸ 比準要素の時期
評価会社の比準要素の時期としては、基本的には算出する期の直前期末となりますが、利益金額については、直前期末以前の2年間分の利益金額を合計して、それを2分の1にした数値を利用することも可能です。
⑹ 類似業種比準方式による評価とならない場合
評価会社の比準3要素のうち、配当金額は、無配であれば「0」となり、利益金額は、直前2期の課税所得が0円以下である場合などは、「0」になります。
また、純資産価額は、債務超過であれば「0」となります。
その結果、直前期末と前々期末の比準3要素のうち2つが「0」の会社(比準要素1の会社)、または、直前期末の比準3要素がすべて「0」の会社は、特定の評価会社となり、原則として類似業種比準価額は用いられず、純資産価額方式による評価となります。
⑺ 斟酌率の確認
評価会社と類似業種とは、当然、社会的な信用度や株式の売却の難易度等も変わってくるため、株価も当然、大きく異なります。
そこで、最後に、斟酌率をかけて、株価の調整を行います。
具体的には、比準要素によって比準されて算出された株価に、以下の斟酌率を掛けます。
大会社 0.7
中会社 0.6
小会社 0.5
⑻ 具体的な計算方法
これまで計算してきた金額をもとに、類似業種比準価額を求めます。
具体的には、
類似業種株価×{(評価会社の1株当たりの配当金額÷課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額)+(評価会社の1株当たりの利益金額÷課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの年利益金額)+(評価会社の1株当たりの純資産価額÷課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの純資産価額)÷3}×斟酌率
となります。
なお、計算式の表としては、国税庁のホームページもご確認ください。
国税庁:類似業種比準価額
このように、類似業種比準価額の評価については、かなり複雑なものとなっておりますので、計算する際は、十分にご注意ください。
さて、次回は、今回、類似業種比準方式の計算式をお伝えしたため、具体的な事例をもとに、計算方法のおさらいをしたく、「相続税~非上場株式の評価⑧類似業種比準方式」として、お話ししようと思います。
それではまた!
相続税~非上場株式の評価⑥類似業種比準方式
みなさんこんにちは!
名古屋もかなり熱くなり、熱中症が心配な季節になりました。
みなさまもこまめに水分補給をしていただき、お体にはお気を付けください。
さて、本日は、「相続税~非上場株式の評価⑥類似業種比準方式」についてお話していこうと思います。
まず、類似業種比準方式とは、評価したい非上場会社(以下、「評価会社」といいます。)の株式と事業内容が類似している上場会社(以下「類似業種」といいます)の1株あたりの株価を参考にして、当該非上場株式の株式を評価する方式です。
類似業種比準方式による株式算定の場合、一般的に、純資産方式による株式算定額よりも低くなる傾向にあります。
実際、類似業種比準方式の方が、純資産価額の半額以下というような事例も多くあります。
そのため、相続税における会社算定を行う際、大会社の場合は、類似業種比準方式と純資産価額方式との選択となるため、評価額を低くしたい場合は、一般に類似業種比準方式を採用した方が良いでしょう。
また、中会社の場合も、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用か、純資産価額方式の選択ができます。
また、小会社の場合は、原則、純資産価額方式ですが、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用を選択することもできます。
そのため、いずれの会社規模であっても、それぞれ純資産価額方式と類似業種比準方式のどちらが株式評価の算定に有利か計算する必要があります。
さて、具体的な類似比準方式の評価方法ですが、まずは、類似業種を調べるところから始めます。
類似業種については、まず、総務省が発表している「日本標準産業分類」により会社を分類します(日本標準産業分類については、以下の法務省のホームページをご確認ください。
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/R05index.htm)
次に、国税庁が公表している「日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表」をもとに、評価会社がどの類似業種に当たるかを判断します(詳細は、以下の国税庁のホームページをご確認ください。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hyoka/170613/01.htm
これによって、類似業種が確認できましたら、次に類似業種の株価と比準要素を調べます。
こちらについては、次回の記事にてご説明します。
それでは、次回については、「相続税~非上場株式の評価⑦類似業種比準方式」と題して、類似業種比準方式の算定の続きについてお話していこうと思います。
それではまた!
相続税~非上場株式の評価⑤会社規模の判定
みなさんこんにちは
名古屋もだいぶ暑くなってきました。
部屋でも熱中症になる危険性もありますので、お体にはお気を付けください。
さて、本日は、前回に引き続き「相続税~非上場株式の評価⑤会社規模の判定」についてお話していこうと思います。
まず、株主の判定を行い、また、特殊な会社でない一般の会社の場合、次に、会社規模の判定を行い、どのような評価方法で計算するのかを判断していきます。
会社については、大会社、小会社、中会社の3つに分けられます。
大会社にあたる場合は、原則として、類似業種比準方式により評価することになります。
類似業種比準方式とは、簡単にいうと、上場している類似の業種の株価を参考に、株式の価額を算出していく方法のことをいい、一般的に類似業種比準方式によって評価した方が、評価額は低くなります。
小会社にあたる場合は、原則として、純資産価額方式により評価することになります。
純資産価額方式とは、簡単にいうと、会社の総資産や負債を評価して、株式を算出していく方法のことをいい、一般的に、類似業種比準方式に比べて、評価額は高くなります。
最後に、中会社にあたる場合は、大会社と小会社の評価方法を併用して評価することになります。
このように、会社規模によって、評価の方法が異なってきます。
それでは、具体的に会社規模の判定ですが、まず、従業員数が70人以上の場合には、それだけで会社の規模が大きいということで、大会社に該当します。
大会社に該当した場合は、それ以降の判定は不要になります。
次に、従業員が70名未満の場合には、①「会社の純資産額と従業員数」と「取引金額」の組み合わせによって判定することになります。
たとえば、小売業で、従業員が15人、総資産価額が6億円、売り上げが17億円の場合は、中会社となります。
なお、中会社でも、3種類あり、類似業種比準方式と純資産価額方式を適用できる割合が異なってきます。
このように、非上場の株式を評価するにあたっては、会社規模の判定を行い、大、中、小のどの会社の規模になるかによって、評価方法が異なり、結果として評価額も異なってきます。
さて、次回は、「相続税~非上場株式の評価⑥類似業種比準方式」についてお話していこうと思います。
それではまた!
相続税~非上場株式の評価④配当還元方式
みなさんこんにちは!
名古屋もだいぶ暑くなってきたため、熱中症などにはお気を付けください。
さて、今回は、「相続税~非上場株式の評価④配当還元方式」について、お話していこうと思います。
まず、株式の評価方法としては、原則的評価方式として、純資産方式、類似業種比準方式があり、特例的評価方法として、配当還元方式があります。
これらの評価方法については、相続で株式を取得した株主が、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主等か、それ以外かで分かれます。
相続で株式を取得した株主が、ほとんど経営支配権を有しない場合などは、例外的評価方法である配当還元方式を使って、株式を評価することになります。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、そもそも、配当還元方式は、過去2年間の配当金の平均額を、利率が10%という仮定の下で還元する方法のことをいいます。
数式としては、以下の通りです。
配当還元価額=(①1株当たりの年間配当金÷10%)×(②1株当たりの資本金等の額÷50円)
※① 1株当たりの年間配当金は以下の計算方法で算出されます。
1株あたりの年間配当金=
(直前期及び前々期の配当金合計額÷2)÷(直前期の資本金÷50円)
※② 資本金等の額とは、貸借対照表でいう資本金と資本剰余金の合計のことをいいます。
たとえば、直前期及び前々期の配当金合計額が1200万円、直前期の資本金額が3100万、直前期末の発行済み株式数が60万株の場合で考えてみます。
まず、1株当たりの年間配当金額は、9円67銭となります。
【計算式】
9円67銭=(1200万÷2)÷(3100万÷50円)
次に、配当還元価額は、997円となります。
【計算式】
1株当たりの資本金等の額=(3100万円÷60万株)=516.66≒516円
配当還元価額=(①9円67銭÷10%)×(②516÷50円)=997円
このように配当還元方式による評価方法については、資料さえそろえば、それほど難しくはありません。
もっとも、資料収集のためには、会社の同意が必要になるため、現実問題、会社の協力が得られなければ、評価が困難になるため注意が必要です。
さて、次回は、「相続税~非上場株式の評価⑤会社規模の判定」についてお話していこうと思います。
それではまた!
相続税~非上場株式の評価③
みなさんこんにちは!
名古屋もかなり暖かくなり、めっきり春の陽気になってきました。
ただ、寒暖差もあり、体調を崩しやすい時期ですので、お体にはお気を付けください。
さて、今回は、前回に引き続き、「相続税~非上場株式の評価③」として、非上場会社における株主の判定についてお話していこうと思います。
前回では、株主の判定として、同族株主のいる会社か、同族株主のいない会社かの選別方法について、ご説明をしました。
復習として、原則、筆頭株主グループの議決権割合(通常の株式は1株1議決権です)が30%以上か否かで同族株主のいる会社かを判別します。
議決権の30%以上を有する株主及びその同族関係者(妻や子など)は、同族株主に当たります。
また、例外的に、筆頭株主グループの議決権割合が50%を超える場合は、当該筆頭株主グループのみ、同族株主に該当し、以外の株主グループは、たとえ30%以上であっても、同族株主とはなりません。
つまり、株主の判定においては、筆頭株主グループが保有する議決権が①50%を超える(同族株主のいる会社)、②50%以下で30%以上(同族株主のいる会社)、③30%未満(同族株主のいない会社)の3パターンに分けられます。
株式を50%ずつ持っている場合は、②の同族株主のいる会社となります。
さて、復習が長くなりましたが、上の①~③のパターンまで判定が出来ましたら、次に、納税義務者(株式の取得者、通常は相続人)が同族株主に当たるか否かを判定します。
①筆頭株主グループが保有する議決権数が50%を超える場合は、筆頭株主グループのみが同族株主に当たります。
それ以外の株主(議決権数が50%以下)は、同族株主以外となります。
たとえば、議決権が100
株主 A 50株
Aの妻B 10株
X 40株
となっている会社の場合、同族株主は、A及びその同族関係者のBのみとなり、Xは同族株主以外となります。
Aが亡くなり、相続人はBと子Cのみの場合、B及びCは、同族株主に当たります。
他方、Xが亡くなり、その子Zが株式を相続する場合、Zは同族株主以外の株主に該当するため、「配当還元方式」という評価方法で株式を計算することになります。
次に、②筆頭株主グループが保有する議決権数が50以下で30%以上の場合は、保有する議決権が30%以上だと、同族株主に当たります。
たとえば、議決権が100
株主 A 30株
Aの妻B 10株
X 25株
Y 35株
となっている会社の場合、同族株主は、A及びその同族関係者のBだけでなく、Yも同族株主に当たります。
Aが亡くなり、相続人はBと子Cのみの場合、B及びCは、ともに同族株主に当たります。
他方、Xが亡くなり、その子Zが相続人の場合、Zは同族株主以外の株主のため、「配当還元方式」という評価方法で株式を計算することになります。
最後に③筆頭株主グループが保有する議決権数が30%未満(同族株主のいない会社)の場合、納税義務者が属する株主グループの議決権が15%以上か15%未満かを判定します。
たとえば、議決権が100
株主 A 10株
Aの妻B 10株
D 25株
E 25株
X 5株
Y 25株
となっている会社の場合、同族株主はおらず、議決権が15%以上の株主グループは、AとB、D、E、及びYとなります。
Aが亡くなり、Aの妻Bと子Cが相続人の場合、BとCは、議決権が15%以上の株主グループに属していることとなります。
他方、Xは議決権が15%未満のため、Xが亡くなり、その子Zが相続人の場合、Zは議決権が15%未満の株主グループに属しているため、「配当還元方式」という評価方法で株式を計算することになります。
以上のとおり、株主の判定については、かなり複雑になりますので、ご不明な部分については、相続税に詳しい税理士にご相談されることをおすすめします。
さて、次回は、同族株主がいある会社における株式の判定について、「相続税~非上場株式の評価④」としてお話していこうと思います。
それではまた!
相続税~非上場株式の評価②
みなさんこんばんは!
名古屋もだいぶ暖かくなりました。
季節の変わり目ですので、みなさんも風邪などにはお気を付けください。
さて、本日は前回に引き続き、「相続税~非上場株式の評価②」について、「株主の判定」について、お話していこうと思います。
まず、「株主の判定」については、「同族株主のいる会社」か「同族株主のいない会社」かを判定します。
株主の判定によって、原則的評価方法か、特例的評価方法のどちらかが使えるかが変わりますので、株式の判定は、非上場株式を評価するうえで、非常に重要なものとなります。
「同族株主」とは、①原則、課税時期における評価会社の株主のうち、株主の一人及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30%以上である場合における、その株主及びその同族関係者のことを言います。
また、特例として、②評価会社の株主のうち、株主の一人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の50%超である会社については、50%超の株主を有するグループに属する株主のことを言います。
たとえば、議決権の総数が以下の株数である会社(Z社)があるとします。
議決権総数が100株
A 40株
B(Aの妻) 5株
C(Aの長男) 7株
D 30株
E(Dの妻) 10株
F(Dの長男) 8株
この場合、Aとその同族関係者(B、C)が所有する議決権の総数は、52株であり、議決権の割合は、52%となります。
他方、Dとその同族関係者(E、F)が所有する議決権の総数は、48株であり、議決権の割合は、48%となります。
先程の①ルールからすると、Aらは、同族株主となり、Z社は、「同族株主のいる会社」となります。
他方、Dらについては、①のルールからすると、同族株主に当たりそうですが、Aらが議決権の50%超であるため、②のルールから、同族株主以外となります。
このように、同族株主がいる会社か否かは、単純な計算で判明しますが、同族株主の意味など難解な用語があり、非上場株式の評価を難しくしています。
そのため、非上場株式で分からなことがあれば、すぐに相続税に詳しい税理士にご相談されることをおすすめします。
さて、次回は、「相続税~非上場株式の評価③」として、引き続き株主の判定についてお話していきます。
それではまた!
相続税~非上場株式の評価①
みなさんこんにちは!
名古屋もかなり暖かくなり、寒暖差が激しい季節になりました。
季節の変わり目で体調を崩される方も増えてきましたので、お体にはお気を付けください。
さて、今回は、「相続税~非上場株式の評価①」とし、相続税の申告における非上場株式の評価方法の概要についてお話ししようと思います。
まず、相続税の申告を行ううえで、非上場株式の評価は非常に難しく、税理士でも苦手意識を持った方もいます。
なぜ非上場株式の評価が難しいのかというと、評価するプロセスが複雑であり、また、非上場株式の評価を行ううえで、これまた評価が難しいと言われる土地の評価も行う必要がある場合もあるためです。
非上場株式の具体的な評価方法ですが、以下の順序で判断します。
①株主の判定(その株主が同族株主等、それ以外の株主のいずれであるかを判定する)
②会社規模の判定(その会社が大会社、中会社、小会社のいずれであるかを判定する)
③特定評価会社等の判定(その会社が特定の評価会社に該当するかどうかを判定する)
④評価方法の適用(以上の判定に基づいて、各区分に応じた評価方式を適用し、それぞれの株式を評価する)
なお、国税庁のホームページにも評価方法の記載がありますので、合わせてご確認ください。
参照リンク:
次に、これの順序で判断されたあと、①類似業種比準方式、②純資産価額方式、③配当還元方式といった3種類の評価方法のうち、いずれかの評価方法で評価します(2種類の評価方法を利用する場合もあります。)。
また、①類似業種比準方式、②純資産価額方式はまとめて「原則的評価方式」と呼ばれ、③配当還元方式は、「特例的評価方式」とも呼ばれます。
なお、これらの評価方式は、任意に選べるものではなく、どの方式を使うかについては、株主の種類や会社の種類によって異なります。
このように、非上場株式の評価方法については、様々なプロセスがあり、評価方法も会社や株主の種類ごとによっても異なる場合もあるなど、非常に複雑です。
そのため、遺産に非上場株式がある場合は、相続税に詳しい税理士に相談されることをおすすめします。
さて、次回は、今回に引き続き「相続税~非上場株式の評価②」についてお話していこうと思います。
それではまた!
限定承認~相続債務とは
みなさんこんにちは!
名古屋もめっきり寒くなり、体を崩しやすい季節になりました。
みなさんも、インフルエンザやコロナには十分にご注意ください。
さて、本日は、「限定承認~相続債務とは」について、お話していこうと思います。
まず、相続債務とは、相続開始時までに発生した被相続人(亡くなった人)の債務のことをいいます。
たとえば、被相続人の医療費や介護費、借金などがあげられます。
また、遺産に不動産や株式、投資信託がある場合、限定承認を行うことによって、譲渡所得税(所得税と住民税)がかかることもあり、これも相続債務に該当します。
これらの相続債務については、弁済する順番があり、これは以下のとおりです。
①相続財産について優先権を有する債権者
②債権申出期間内に申し出た相続債権者及び知れている相続債権者
③債権申出期間内に申し出なかった相続債権者
このうち、①優先権を有する債権者とは、たとえば、遺産である土地に抵当権を設定している債権者などがあげられます。
また、②知れている相続債権者とは、氏名や債権額も知れている相続債権者のことをいいます。
そのため、債権額について争いがある場合は、「知れている相続債権者」に該当しない可能性があります。
また、法律上の規定はありませんが、債権ごとに弁済の優先順位が異なる可能性があります。
たとえば、税金と消費者金融からの借入では、税金の方が、弁済順位が高いものとして、消費者金融からの借入に優先して、弁済する必要がある可能性があります。
もっとも、この点については、法律上の明文もないため、実際に弁済を行おうとする際は、各債権者に対し、弁済順位や弁済金額を示した書類を送付し、異議がないことを確認したうえで、実際の弁済手続を行った方が良いでしょう。
このように、限定承認における弁済手続は、かなり複雑なものになりますので、ご不安な場合は、弁護士にご相談されることをおすすめします。
さて、次回は、相続税に関することとして、「相続税~非上場株式の評価①」について、お話していこうと思います。
それではまた!
限定承認~先買権の登記
みなさんこんにちは!
名古屋もめっきり寒くなり、インフルやコロナもますます流行ってきております。
みなさんもどうぞ、お体にはお気を付けくださいませ。
さて、本日は、「限定承認~先買権の登記」について、お話していこうと思います。
そもそも先買権とは、簡単にいうと、限定承認による競売を差し止め、かつ、限定承認者が対象の相続財産を優先的に買い受けることができる権利のことを言います。
この先買権を行使する場合、裁判所に鑑定士を選任してもらい、鑑定額を支払って、当該相続財産を取得することになります。
相続財産が不動産の場合は、登記手続きを行う必要があります。
登記手続きについて、相続人が複数の場合には、①共同相続人全員の法定相続分による相続登記を行い、②年月日民法第932条ただし書の価額弁済を登記原因とし、相続財産取得者を登記権利者、他の共同相続人を登記義務者、相続財産管理人を双方の法定代理人として登記を行うことになります。
なお、限定承認をした相続人が一人の場合や、限定承認をした相続人が法定相続分に従って民法932条ただし書の価額弁済をした場合は、単に相続による所有権移転登記を行うことになります。
つまり、相続人が複数いる場合に、先買権行使により、相続人ひとりの単独名義にする場合、一旦、法定相続分どおりに相続登記をし、その後、先買権行使を原因として、持分移転登記をする必要があり、通常の相続登記とは異なるということです。
このように、限定承認については、登記手続きに関しても、通常の相続とは異なるため注意が必要です。
また、専門家であっても、限定承認の先買権行使による相続登記を行った方はほとんどいないかと思います。
そのため、先買権行使による登記手続きを専門家に依頼する場合は、限定承認に詳しい専門家に依頼した方が安心でしょう。
さて、次回は、限定承認でも問題になることがある論点として、「限定承認~相続債務とは」について、お話していこうと思います。
それではまた!