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限定承認の落とし穴~先買権

カテゴリ: 限定承認

みなさんこんにちは!

 

今回は、前回に引き続き限定承認の注意点として、「限定承認の落とし穴~先買権」についてお話していこうと思います。

 

まず先買権とは何かについてですが、そもそも限定承認では債務の弁済のために遺産を換価する必要がある場合、原則、競売を行う必要があります。

 

もっとも、競売となると相続人としては、取得したい遺産があったとしても取得できない可能性が高くなるため、法律は、相続人の利益にも配慮して、相続人に対し、遺産を優先的に取得する権利である先買権を認めました。
つまり、先買権とは、競売手続きを停止させ、相続人に遺産の優先取得権を認めた制度のことをいいます。

 

この先買権の注意点として、抵当権などの担保権が実行されたことによる競売については、当該担保権者の同意がない限り、先買権を行使しても、担保権の実行を止めることはできません。

 

たとえば、自宅に抵当権が設定されている場合、相続人が自宅を取得しようと考えたとしても、抵当権者が抵当権を実行した場合、相続人は先買権を行使しても、抵当権の実行を止めることはできません。


この場合、相続人としては、抵当権者と交渉して、任意に抵当権の実行を止めるしかありません。

 

そのため、先買権は、取得希望の遺産に担保権が付いている場合、先買権を行使したとしても空振りになる可能性もあり、また、先買権を行使するためには、事前に家庭裁判所に選ばれた鑑定士に鑑定を行ってもらう必要があるため、鑑定費だけ余分に掛かる可能性もあります。

 

また、先買権を行使した結果、遺産を取得したとしても、相続人が一人の場合や法定相続人全員が法定相続分の割合で先買権を行使した場合以外は、法定相続分割合による相続登記を行う必要があります。


この法定相続分割合による相続登記をせず、いきなり先買権を取得した相続人一人の単独名義にしてしまうと、遺産を処分したこととなり、限定承認が無効になる可能性があります。

 

このように、先買権については、遺産に担保権が付いている場合や、登記手続きの際に落とし穴があるため、先買権の行使を検討されている方は、一度、弁護士などの専門家にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、今回に引き続き限定承認についての話題として、「限定承認の落とし穴~競売」についてお話していこうと思います。


それではまた!
 

限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き②

カテゴリ: 限定承認

みなさんこんにちは!

本日は、前回に関連して、「限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き②」についてお話していこうと思います。

 

前回の復習として、限定承認は、相続人全員で行う必要があり、一人でも限定承認に反対している相続人がいる場合、限定承認をすることはできません。

 

そのため、限定承認を行う場合は、事前に相続人間で協議し、3か月の期限内に、家庭裁判所に限定承認の申述を行う必要があります。

 

なお、限定承認の申述する先は、亡くなった方(被相続人)の最後の住所地となり、被相続人の最後の住所地が名古屋市なら、名古屋家庭裁判所に申述する必要があります。

 

このように、限定承認については、相続人全員で行う必要があります。
もっとも、例外的に、すでに相続放棄をしている相続人がいる場合は、相続放棄をした相続人以外の相続人全員で、限定承認を行うこともできます。

 

たとえば、相続人が被相続人の子3人の場合、子の一人が相続放棄をした場合は、残りの子2人だけで限定承認の手続きを行うことができます。

 

この場合、家庭裁判所には、限定承認に必要な書類に加えて、相続人の一人が相続放棄をしたことを示す書類として、相続放棄の申述受理通知書や相続放棄申述受理証明書の提出を求められる場合もあります。

 

また、さきほどの事例で、子が3人とも相続放棄をし、次の相続人が被相続人の兄弟姉妹となる場合、限定承認するためには、兄弟姉妹全員で限定承認の申述を行う必要があります。
 
この場合も、家庭裁判所には、子3人が相続放棄をした事を示す書類として、相続放棄の申述受理通知書や相続放棄申述受理証明書の提出を求められる場合もあります。

 

このように、限定承認を行う場合は、基本的に相続人全員の協力が不可欠であり、例外的に、相続放棄をした相続人がいる場合は、その相続人を除いて限定承認をすることができます。

 

限定承認については、3か月以内に、手続きを行う必要があり、3か月の期限を過ぎてしまうと、限定承認ができなくなる可能性もあるため、期限に間に合わなさそうな場合は、期限の伸長手続きを行うこともできます。
また、限定承認については、限定承認後の手続きも複雑となるため、限定承認をお考えの方は、一度、専門家にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、今回に引き続き、「限定承認の落とし穴~先買権」についてお話していこうと思います。

 

それではまた!

限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き①

カテゴリ: 限定承認

みなさんこんにちは!

 

名古屋もだいぶ春らしい気温になってきました。
季節の変わり目ですので、みなさんもお体にはお気を付けください。

 

さて、本日は、前回に関連して、「限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き➀」についてお話いたします。

まず、限定承認は、相続人全員で行う必要があり、相続人のうち、一人でも反対している場合は、限定承認をすることは出来ません。

 

そのため、限定承認を行う場合は、相続人全員の了解を得る必要があります。

 

もっとも、例外的に、相続放棄をした相続人がいる場合や、生死が不明な相続人がいる場合は、相続人全員で限定承認を行う必要はありません。

 

相続放棄をした相続人がいる場合は、その相続人以外の相続人全員で限定承認を行うことになり、生死が不明な相続人がいる場合は、その相続人のために不在者財産管理人を選任し、その管理人が家庭裁判所の許可を得て、他の相続人と共同で限定承認をすることができます。

 

なお、限定承認も3か月の期限があるため、3か月以内に限定承認の申述を家庭裁判所にする必要があります。


この3か月の期限は、相続人ごとに判断し、限定承認の場合は、一部の相続人が3か月の期限を経過していたとしても、他の相続人が3か月の期限内であれば、限定承認を行うことができると考えられています。

 

もっとも、一部の相続人の中に、遺産を処分した者がいる場合は、もはや限定承認はできないと考えられているため、注意が必要です。

 

このように、限定承認については、相続人全員で行う必要があり、また、3か月の期限や、遺産を処分してはならないなどのルールがあります。


また、これらのルールを破ってしまった場合、限定承認が認められなくなる場合があります。

 

そのため、限定承認を行う場合は、事前に限定承認のルールや注意点等を調べたうえで、専門家の指導のもと行うか、もしくは、専門家に依頼してしまった方が安心です。

 

さて、次回は、今回の続きとして、「限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き②」についてお話していこうと思います。

 

それではまた!
 

限定承認の落とし穴~譲渡所得税について

カテゴリ: 限定承認

みなさんこんにちは!

名古屋も含め、まだまだ寒い季節が続きますので、みなさんもお体にはお気を付けください。

 

さて、本日は、「限定承認の落とし穴~譲渡所得税について」についてお話していこうと思います。

 

そもそも限定承認とは、簡単にいうと、被相続人の相続について、遺産の限度で負債を取得するという制度です。

 

たとえば、遺産が1億円、負債が2億円ある場合、限定承認を行えば、遺産1億円の範囲で負債を引き継ぐため、結果的に相続する負債は1億円となります。

 

限定承認が行われるケースとして、遺産の額や負債の額が分からないケースや、借金もあるが自宅などを手放したくないケースなどです。

 

もっとも、限定承認は極めてマイナーな手続きであるため、令和2年時点において、相続放棄の件数が23万4732件であるのに対し、限定承認は675件のみとなっています。

 

その要因となっているのは、限定承認の法整備があまり進んでおらず、また、手続きも極めて煩雑であり、また、対応できる専門家がほとんどいないことがその要因と考えられます。

 

また、限定承認には、いくつかの落とし穴もあり、それも限定承認の数が増えていない要因だと考えられます。

 

以下では、限定承認の落とし穴について、まず、譲渡所得税についてお話していきます。

 

通常の相続の場合、被相続人が所有していた不動産を相続したとしても、当該不動産を売却しない限り、相続税がかかることはあっても、譲渡所得税はかかりません。
なぜなら、譲渡所得税は、不動産を売却して得た利益にかかる税金だからです。


しかし、限定承認の場合は、相続であるにも関わらず、不動産を売却しなくとも、譲渡所得税がかかります。


譲渡所得税は、不動産の金額や所有期間によって異なりますが、売却益の約20%に税金がかかる場合があります。


たとえば、不動産の価額が3000万円の場合、限定承認をしてしまうと、不動産の価額の20%の600万円が譲渡所得税として税金を納めなければならなくなる場合があります。
 
仮に、3000万円の不動産と負債が2400万円のみの場合、限定承認を行うと、2400万円の負債に加えて、600万円の譲渡所得税も支払わなければならなくなる場合があります。

 

なお、仮に、負債の額と譲渡所得税の額を合計した金額が遺産の額を超えた場合は、遺産の額に相当する負債(譲渡所得税分を含む。)を支払うことで足り、遺産を超えた額を支払う必要はありません。

 

このように、限定承認については、万が一手続きを行う場合は、譲渡所得税に気を付ける必要があり、手続きを行う際は、限定承認を行った経験のある弁護士や税理士にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は今回の続きとして、「限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き」についてお話していこうと思います。

 

それではまた!
 

相続放棄のデメリット

カテゴリ: 相続放棄

みなさんこんにちは!


最近、名古屋でも、コロナウイルスだけでなく、インフルエンザが流行りだしてきました。


インフルエンザも重症化のおそれがありますので、みなさんもお気を付けください。


さて、本日は、「相続放棄のデメリット」について、お話していこうと思います。

 

相続放棄を行うデメリットとしては、①相続放棄をすると他の親族に迷惑がかかる場合がある、②相続放棄をするとプラスの財産も一切受け取れなくなる、③相続放棄手続きが煩雑である、④生命保険金や死亡退職金を受け取ったときの相続税が高くなる場合があることがあげられます。

 

1 ①相続放棄をすると他の親族に迷惑がかかる場合がある


相続放棄をすると、他の相続から恨まれる場合やトラブルになる場合があります。


そもそも、相続放棄をすると、相続の割合が変更になり、また、相続人が変わります。


具体的には、子や孫等が全員相続放棄をすると、次の相続人は両親や祖父母等となり、両親や祖父母等が全員相続放棄をすると、被相続人の兄弟姉妹、甥姪が相続人となります。

 

よくトラブルになるケースとして、被相続人に多額の借金があり、妻や子らはそれを知っていたため、全員がすぐに相続放棄をしたが、被相続人の兄弟姉妹などは、被相続人に借金があることを知らなかったため、急に債権者から兄弟姉妹宛に、借金の督促状が届いた場合などがあります。
 
そのため、相続放棄をする場合は、次の相続人に迷惑をかけないか、相続人は誰になるのかを理解したうえで、相続放棄を行う必要があります。

 

2 ②相続放棄をするとプラスの財産も一切受け取れなくなる


基本的に相続放棄は、一度手続きをしてしまうと、後戻りすることはできず、後日、相続しようと思っても、相続放棄の取消や撤回はできません。


たとえば、被相続人に借金が多いと思い、相続放棄をしたが、実は、財産の方が多かった場合、相続放棄をしてしまった以上、当然、プラスの財産も相続できなくなります。


 そのため、相続放棄をするかどうかは、慎重になった方が良く、相続放棄をする前に、しっかりと遺産調査を行った方が良いでしょう。

 

3 ③相続放棄手続きが煩雑である


相続放棄を行う場合、家庭裁判所に戸籍謄本や住民票、印紙、郵券、相続放棄申述書等を3か月以内に提出する必要があります。


被相続人の住所地や本籍地が遠方の場合、戸籍謄本を取得するにも時間がかかり、また、相続放棄申述書も記載が間違っていると、相続放棄ができなくなる可能性があるため、いろいろな文献等を調査する必要があります。


このように、相続放棄を行う場合、資料や情報の収集に手間と時間がかかり、手続きが煩雑になる場合があります。


4 ④生命保険金や死亡退職金を受け取ったときの相続税が高くなる場合がある


相続放棄を行った人が、生命保険金や死亡退職金を受け取った場合、相続放棄をしなかった場合に比べ、相続税が高くなる場合があります。

 

そもそも、生命保険金や死亡退職金には、非課税枠というものがあり、相続人の数×500万円までは、税金がかかりません。
しかし、相続放棄をした人には、この非課税枠が適用されないため、高い相続税を納めなくてはならなくなる場合があります。


このように、相続放棄を行う場合、さまざまなデメリットがありますので、相続放棄をご検討の際は、一人で悩まず、必ず専門家にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、「限定承認の落とし穴~譲渡所得税について」について、お話ししようと思います。


それではまた!

 

相続の承認または放棄の期間伸長

カテゴリ: 相続放棄

みなさんこんにちは!


最近、名古屋も含め、めっきり寒くなってきました。
かぜをひきやすい季節になりましたので、みなさんもお気を付けください。

 

さて、本日は、「相続の承認または放棄の期間伸長」について、お話していこうと思います。

 

まず、相続には、3か月の期限があり、3か月間、何も手続きをしなければ相続をしたものとして扱われます。

 
一度、相続したものと扱われてしまうと、基本的に、相続を撤回することはできません。
そのため、相続放棄や限定承認を検討していて、3か月の期限を過ぎてしまった場合、相続したものと扱われるため、相続放棄や限定承認ができなくなります。

 

この3か月の期限について、法的には熟慮期間といいますが、この熟慮期間については、相続の承認または放棄の期間伸長申立という裁判所を通した手続きを行えば、延長することが可能です。

 

この期間伸長申立については、相続人ごとに行う必要があり、A、B、Cの相続人がいた場合、Aのみが期間伸長申立を行い、B、Cが期限内に期間伸長申立を行わなかった場合、B、Cは相続したものと扱われてしまいます。

 

また、期間伸長申立についても、3か月の期限内に行う必要があり、期限を過ぎてしまうと、相続したものとして扱われてしまいます。

 

実際の手続きについて、まず、期間伸長申立ができるのは、相続人や債権者等の利害関係人、検察官です。

 

相続人については、相続放棄や限定承認を検討している相続人はもちろん、他の相続人であっても、申立を行うことができます。
また、次順位の相続人であっても、申立が行うことができる場合があります。
なお、検察官が期間伸長申立を行うことは、ほとんど皆無です。

 

次に、期間伸長申立手続きに必要となる書類としては、以下のようなものがあげられます。
なお、期間伸長対象の相続人と被相続人との関係で、必要となる戸籍謄本の種類が異なりますので、詳しくは、専門家にご相談ください。


①被相続人の住民票除票又は戸籍附票
②利害関係を証する資料(相続人の場合は戸籍謄本など)
③伸長を求める相続人の戸籍謄本
④被相続人の死亡から死亡までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
⑤代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

 

万が一、不足書類があり、追加で集めることができなかった場合、期間伸長申立が認められず、相続をしたものと扱われる可能性がありますので、ご注意ください。

 

また、期間伸長申立については、複数回行うことも可能ですが、実務的には、1度目の期間伸長は問題なく認められることが多いですが、2回目以降になると、期間伸長を行う合理的な理由が必要となり、認められにくくなりますので、ご注意ください。

 

このように、期間伸長申立については、期限内に必要な書類を集めて行う必要があり、専門知識はもちろん、時間と労力が必要となります。
そのため、期間伸長申立をお考えの方は、一度、相続に詳しい専門家にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、「相続放棄のデメリット」について、ご説明しようと思います。

 

それではまた!
 

相続放棄の取消

カテゴリ: 相続放棄

みなさんこんにちは!
名古屋もだいぶ寒くなり、いよいよ冬が来たという感じです。


これからの季節、体調を崩しやすいため、十分にお気を付けください。

 

さて、本日は、「相続放棄の取消」についてお話していこうと思います。

 

まず、家庭裁判所での相続放棄が認められた場合、基本的に相続放棄の取消は認められません。

 

もっとも、例外的に相続放棄の取消が認められる場合があり、たとえば、詐欺や強迫によって相続放棄した場合や錯誤によって相続放棄した場合、未成年者が法定代理人の同意なく相続放棄をした場合、成年被後見人本人が相続放棄をした場合などがこれに当たります。

 

このうち、相続放棄の取消のご相談の中で一番多いのが、錯誤によって相続放棄をしてしまったケースです。

そもそも、錯誤とは、簡単にいうと勘違いということです。


たとえば、遺産はほとんどなく、借金のみがあると思い、それを理由に相続放棄をしたが、後日、多額の遺産が見つかった場合に、相続放棄の取消が認められる可能性があります。

 

もっとも、相続放棄をする際に遺産を十分に調査していなかった場合などの理由があると、相続放棄の取消が認められない可能性もありますので、ご注意ください。

 

次に、実際に相続放棄の取消を行う方法ですが、相続放棄の取消の期限内に、必要書類をそろえて、相続放棄の申述をした家庭裁判所宛に、相続放棄取消申述書を提出します。

 

相続放棄の取消の期限については、追認をすることができる時から6カ月以内か相続放棄の時から10年以内となります。


この期限を過ぎてしまうと、相続放棄の取消ができなくなるため、注意が必要です。

 

また、必要書類については、取消の原因となる証拠を添付する必要があります。

 

このように、相続放棄については、一度、家庭裁判所で認められてしまうと、取り消すことが難しく、また、取り消す手続きも煩雑となるため、相続放棄をする際は、十分に検討のうえ、行う必要があります。

 

そのため、相続放棄をすべきかご不安の方は、一度、弁護士などの専門家にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、相続放棄をするかどうかの期限を延ばす手続きである「相続の承認または放棄の期間伸長」についてお話していこうと思います。


それではまた!
 

相続放棄と管理責任

カテゴリ: 相続放棄

みなさんこんにちは!


名古屋もだいぶ秋らしい気温となり、ぐっと寒くなりました。
季節の変わり目ですので、体調にはお気を付けください。

 

さて、本日は、前回と関連して、相続放棄後の管理責任について、「相続放棄と管理責任」と題して、お話していこうと思います。

 

まず、相続放棄を行ったとしても、管理責任を負うことがあり、万一、管理が適切ではなく、他人に危害を加えてしまった場合、責任を負う可能性があります。


たとえば、遺産の中に、今にも倒壊しそうな空家があったにも関わらず、適切に管理されず放置された結果、空き家が倒壊し、隣家に被害が生じてしまった場合は、相続放棄をした人であっても、その損害を賠償しなければならない可能性があります。

 

そのため、相続放棄をした人であっても、遺産を適切に管理すべき場合があります。

 

相続放棄をした人が適切に管理できない場合や、管理責任を免れたい場合は、裁判所を通して、相続財産管理人という人を選任してもらう必要があります。

 

もっとも、相続財産管理人を選任するためには、遺産の規模にはよっては、50万円から100万円程度、裁判所に納める必要があり、管理責任を免れるためにも、高額な費用がかかるのが現実です。

 

また、相続放棄をした人が複数人いる場合や、相続放棄をした人がそもそも遺産の存在を知らず、被相続人の生前も管理していなかった場合等について、誰がどのように遺産を管理すべきか、明確な規定や判例がなく、専門家の間でも判断が分かれている部分があります。

 

たとえば、父が亡くなり、妻、子が相続放棄をし、次に、父の兄弟、甥姪も相続放棄をした場合、管理責任を負うのが誰なのかについて、現行法では規定がありません。

 

そのため、最大限リスクを考えると、相続放棄をした人全員が管理責任を負うという考え方もできます。

 

こういったリスクを考えると、最終的には、お金を出して相続財産管理人を選任し、管理責任を免れた方が安心かもしれません。

 

なお、近年、この点について、民法改正があり、相続放棄後の相続財産の管理責任について、明確化されました。


もっとも、施行日は、令和5年4月1日となりますので、現在は、現行法のとおりとなり、実務的には管理責任は、あいまいなままということになりますので、ご注意ください。

 

さて、次回は、相続放棄に関連して、「相続放棄の取消」について、お話していこうと思います。

 

それではまた!
 

相続放棄と再転相続

カテゴリ: 相続放棄

今回は、特殊な相続放棄として、「相続放棄と再転相続」について、お話ししようと思います。

 

再転相続とは、被相続人が亡くなり、被相続人の相続人が期限内に相続か放棄かの選択をする前になくなり、次の相続人が相続したケースをいいます。


簡単にいうと、1回目の相続が決まる前に、2回目の相続が開始してしまったケースのことです。


1回目の相続のことを一次相続、2回目の相続のことを二次相続と言い、一次相続の相続人を一次相続人、二次相続の相続人を二次相続人や再転相続人と言います。

 

たとえば、祖父が亡くなって父が相続したが、父が相続放棄をするか決める前に亡くなってしまい、子が相続したケースの場合、祖父が被相続人、父が一次相続人、子が再転相続人に当たります。

 

再転相続は複雑であるため、以下では、この事例に沿ってお話します。

 

まず、再転相続に関して、再転相続人(子)は、被相続人(祖父)の相続と一次相続人(父)の相続に関して、放棄するか、そのまま相続するかを選択することができます。

 

そのため、再転相続人(子)は、被相続人(祖父)の相続を放棄し、一次相続人(父)の相続のみ、相続することができます。

 

もっとも、再転相続人(子)は、被相続人(祖父)の相続について、一次相続人(父)を通して相続するため、一次相続人(父)の相続を放棄し、被相続人(祖父)の相続のみ相続することはできません。

 

次に、再転相続の相続放棄の期限について、判例上、被相続人(祖父)がなくなり、一次相続人(父)がこれを引き継ぎ、一次相続人(父)の相続を再転相続人(子)が相続したことを知った時から、3か月と考えられています。

 

そのため、再転相続人(子)と被相続人(祖父)が長年疎遠であったため、再転相続人(子)は、被相続人(祖父)が亡くなってから5年後に、被相続人(祖父)が亡くなったことを知った場合、その時から3か月以内が相続放棄の期限となります。

 

なお、再転相続については、一次相続人(父)が被相続人(祖父)の相続について、相続するか放棄するかを決める期間内に亡くなった場合ですので、そもそも、一次相続人(父)が被相続人(祖父)の相続を相続している場合は、再転相続には当たりませんので、ご注意ください。

 

このように、再転相続については、相続の有無や相続放棄の期限など、専門的な知識が必要となります。

 

専門家の中には、再転相続について良く知らない方もおり、誤ったアドバイスをする方もいるため、専門家にご相談される際は、相続に強い専門家にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、相続放棄後のことに関して、「相続放棄と管理責任」について、お話していこうと思います。

それではまた!
 

相続放棄の落とし穴

カテゴリ: 相続放棄

今回は、前回に引き続き、相続放棄に関するお話として、「相続放棄の落とし穴」について、お話していこうと思います。

 

まず、相続放棄は、適切に手続きを行わないと、法的に相続放棄ができず、結果として被相続人の借金等を背負うことになるかもしれません。

 

相続放棄を行う場合、3か月の期限内に、家庭裁判所に対し、必要書類をそろえ、相続放棄の申述を行う必要があります。

 

よくある間違いとして、債権者や他の相続人等に対し、書面や口頭で、「相続放棄をする」と伝えたが、家庭裁判所での相続放棄の手続きを行っていない方がいます。
この場合、法的に相続放棄はできていません。

 

そのため、債権者から借金を支払うように請求があった場合は、借金を支払うこととなってしまいます。

 

次に、相続放棄をしてしまうと、親族にも借金がいってしまう可能性があります。

 

相続人には、第1順位から第3順位までの順番があり、順番が若い相続人全員が相続放棄をすると、次の順位の人が相続人となります。


相続人の順位は、子や孫等が第1順位、親や祖父母等が第2順位、兄弟姉妹、甥姪が第3順位です。

 

たとえば、被相続人の子が全員、相続放棄をした場合、被相続人の両親が存命の場合、両親が相続人となり、被相続人に借金があった場合、相続放棄をしない限り、両親が借金を背負うこととなります。

 

このように、相続放棄を行った場合、他の親族にも借金がいく場合がありますので、注意が必要です。

 

最後に、相続放棄をする場合、遺産を処分してしまうと相続放棄ができなくなってしまう可能性があります。

 

たとえば、当面の生活費のために、被相続人の預貯金を引き出し、使ってしまった場合、相続放棄ができなくなってしまいます。

 

そのため、相続放棄をする場合は、基本的に、被相続人の物には手を付けず、そのままにしておくことをおすすめします。

 

このように、相続放棄には、いろいろな落とし穴が存在します。
そのため、相続放棄を行う際は、相続に詳しい弁護士などの専門家にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、特殊な相続放棄に関する話題として、「相続放棄と再転相続」について、お話いたします。

 

それではまた!

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